「教える事」の弊害：コーチング方法の再考

「教える」ことの弊害を考える

最近、指導をしながら「教える」ことが選手に与える影響について深く考える機会が増えました。もちろん、全く知らないことを学ぶためには教えることが必要です。しかし、あまりに教えすぎると、選手自身が思考を停止してしまい、受け身の姿勢に陥ることもあります。今回は、スポーツにおける「教えること」の弊害と、指導法としての「ボトムアップ理論」について考えていきたいと思います。

コーチが課題を見つける指導の問題点

一般的な指導方法では、コーチが練習メニューを考え、それを選手が実践するという形がよく見られます。このやり方だと、選手がただ指示をこなすだけになり、「課題を見つける」重要なステップを経験することが少なくなります。選手が自分で問題点を発見しないと、ただ与えられた課題をこなすだけで成長の機会が失われてしまう可能性があります。

課題を見つける面白さ

「課題を見つける」というプロセスは、実はスポーツの面白さを生み出す要素の一つではないでしょうか。自分自身で試行錯誤し、現在の状況を分析しながら課題を発見することができると、選手にとってその競技が一層魅力的になります。特に若い選手にとって、こうした「発見」のプロセスは成長の基盤となり、自己の成長を感じるきっかけになります。

ボトムアップ理論の導入

そこで、最近私が指導するチームでは「ボトムアップ理論」を導入し、選手に練習メニューや課題設定を任せる取り組みを始めています。このアプローチでは、選手が自ら考え、練習の内容を組み立てるため、コーチの役割はあくまでサポートに徹します。もちろんトップダウンの方法よりも時間はかかりますが、選手が主体的に「課題を見つけ」「課題解決に向けた方法を考える」というプロセスを通して競技力だけでなく人間的にも成長していくことを期待しています。

課題解決のプロセスがもたらす成長

この一連の課題発見から解決に至るまでのプロセスには、多くの学びと成長の機会が詰まっています。特に、自分で見つけた課題だからこそ、その解決に対する意欲も自然と高まります。この取り組みは、単にスキルの向上にとどまらず、問題解決力や自己効力感を高め、長期的な競技生活にも良い影響を与えると感じています。

 

努力が楽しくなるワクワク感

選手が自分で課題を見つけ、解決方法を模索することで、その過程自体にワクワク感が生まれます。自らの努力が結果に結びつく喜びを感じることで、練習に対するモチベーションが高まり、さらに努力が楽しいと感じるようになります。逆に、教えすぎてしまうと受け身の姿勢になり、ただ与えられた内容をこなすだけの形式的な取り組みになりがちです。このような状態では、成長に必要な好奇心や達成感を感じにくく、練習がつまらないものになってしまいます。

ワクワクする脳を育むために

「ボトムアップ理論」によって、選手が主体的に取り組む姿勢を育て、「ワクワクする脳」へと変えていくことを目指しています。練習を楽しみ、自己成長を実感できる環境を作ることが、長期的な競技生活における心の強さや忍耐力の向上にもつながります。選手自身が課題発見を楽しめるような指導を実践し、彼らの可能性をさらに広げていきたいと考えています。

まとめ

指導において「教えること」は必要ですが、それに頼りすぎると選手が受け身の姿勢になり、主体的な思考や課題発見の楽しさを失ってしまいます。ボトムアップ理論の導入により、選手が自分で考え、課題を見つけ、解決に向けたプロセスを楽しむ環境を整えることで、競技力の向上だけでなく人としての成長も期待できます。選手たちの「ワクワクする脳」を育み、彼らが自らの限界を超えていく姿を見るのが、コーチとしての喜びです。

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