選手主体の練習メニュー作りがもたらす変化
最近、コーチングにおいて、選手たち自身に練習メニューを考えさせる「ボトムアップ理論」という新たな方法を実践してみました。その結果、これまで自分の意見をあまり出さなかった選手たちが、積極的に意見を出し始め、練習中もこれまで以上に生き生きとした姿が見られるようになりました。この経験から、私は自分がこれまで教えすぎていたのかもしれないと内省すると同時に、人は自分で考え、自ら決断したことに対してこそ、本当に前向きに取り組むのだと強く感じました。これは、選手の自発的な行動や意思決定を促すことの重要性を再確認させられる経験でした。
脳の働き:楽しいことが続く理由
この現象の背後には、脳の働きに関する重要なメカニズムが存在しています。脳は、「正しいこと」よりも「楽しいこと」を優先しやすく、楽しいと感じる行動は自然と長続きする傾向があります。これに対して、たとえ正しいとされる練習メニューでも、選手たちが「やらされている」と感じてしまうと、モチベーションが下がり、積極的に取り組むことが難しくなります。しかし、選手たち自身が考えた練習メニューであれば、作り上げるプロセス自体が楽しさを伴い、その結果、練習にもより意欲的に取り組むことができるのです。
これは、コーチとしての役割を再考させるポイントでもあります。単に「正しい方法」を教えるだけではなく、選手自身に考える余地を与えることで、脳が楽しいと感じるプロセスを作り出し、持続的な学びや成長に繋げることができるのです。
自責感の育成と成長の原動力
さらに、このアプローチが選手たちに「自責感」をもたらす点にも注目すべきです。もし、コーチが提示した練習メニューが思うようにいかなかった場合、選手はその失敗をコーチの責任に転嫁し、他責の姿勢を取る可能性があります。しかし、選手自身が考えたメニューであれば、その結果に対して自分たちで責任を負い、自責として受け止めることができるのです。この「自責感」を持つことが、選手にとって成長するための鍵であり、他責に頼る姿勢では、人は成長することができません。
他責の姿勢に陥ると、問題から目をそらしてしまい、その解決に向けて行動することができなくなります。逆に、どんな問題でも自分の責任として捉え、自責の姿勢を持つことで、問題に立ち向かい、それを解決するための行動に移すことができます。このような姿勢が選手たちに浸透すれば、チーム全体の成長やパフォーマンスの向上に繋がると考えています。
問題解決のプロセスを楽しむことの重要性
また、重要なのは、単に問題を解決することだけでなく、そのプロセスを楽しむことです。どんなに困難な問題であっても、解決策を見つけようとする過程を楽しめるかどうかが、その人の成長に大きく関わってきます。脳は現状維持を好む性質があるため、新しい挑戦や変化に対して抵抗を感じることが多いです。しかし、その抵抗を乗り越えて、問題解決に向かって進んでいくプロセスを楽しめるようになれば、成長するための道筋が自然と見えてくるはずです。
選手たちにとっても、問題を楽しみながら解決することが、より積極的でクリエイティブな思考を促し、最終的にはパフォーマンスの向上にも繋がっていくでしょう。このような姿勢が、今後のチーム全体の成長を支える大きな要素になると感じています。
コーチとしての新たな挑戦と成長
今回、選手たちに練習メニューを考えさせるという試みは、私自身にとっても新たな挑戦でした。これまでのコーチングスタイルでは、私が練習メニューを決め、それを選手に実行させるという形が主流でしたが、選手たち自身に考えさせることで、彼らの自主性や主体性を引き出すことができることを改めて学びました。このような新しいアプローチを試みることは、コーチとしての成長にも繋がり、現状に満足することなく、新たなチャレンジに挑み続ける重要性を実感しています。
脳は変化に対して抵抗を感じやすいものの、その枠を超えてチャレンジを続けることで、より多くの可能性が開けていくと信じています。今後も、選手たちと共に新しい方法を模索し、チーム全体の成長と成功を目指していきたいと考えています。
現状維持を超えて
脳が現状維持を好むという性質を理解しながらも、選手たちに自主的に練習メニューを考えさせるという新しいアプローチを試みることは、私自身にとっても成長の機会でした。コーチとしても選手たちにとっても、現状にとどまることなく、新しいことに挑戦し続けることが、より高いレベルの成果をもたらすのです。これからも、現状に満足せず、選手たちと共に様々なことに挑戦し続けていきたいと思います。